シェフとコックの違いとは? 5つの視点から違いを解説

2022.08.23

世の中には業界の外にまで浸透しているさまざまな業界用語がありますが、間違った意味で使われていたり、正しい意味が知られておらず曖昧なまま使われたりしているような言葉があります。

料理業界にもこうした用語があります。たとえば、シェフとコック。

皆さん普段何気なく聞いたり使ったりしているかと思いますが、両者の違いを明確に理解している人はまれで、ほとんどの方は同じような意味として理解されているのではないでしょうか。

この記事では、料理業界ならではの用語の中でも特にシェフとコックという2つの言葉について、それぞれが意味するところ、両者の違いについて解説します。

記事の末尾にシェフの料理を自宅で気軽に楽しめる近頃話題のサービスについて説明しますので、ぜひそこまで離脱なさらずお読みいただけると幸いです。

シェフとコックの違い①:語源

シェフもコックも料理人の呼び名であることに違いはありません。

シェフの語源は、フランス語のシェフ・ド・キュイジーヌ(chef de cuisine)。日本語に訳すと、chefはリーダー、cuisineは台所・厨房のことを意味します。つまりシェフは厨房の主任という位置づけになります。

 一方、コックの語源はオランダ語のkok(コック)。それを英語にするとcookとなります。クッキング(cooking)という言葉から察しがつくように、コックはレストランで働く調理スタッフ全般を指します。皿洗いや後片付け、肉や野菜の下ごしらえ、調理、味付け、仕上げなど、あらゆる仕事が「コック」には含まれます。

 つまりシェフは、複数いるコックたちをとりまとめる主任、すなわち料理長のことを指します。そのため基本的には、皿洗いや後片付けなどの雑用をすることはなく、できあがった料理の出来栄えをチェックするという違いがあります。

 シェフとコックの違い②:仕事の内容

上で記した通り、コックは調理に関わるあらゆる作業を担当します。小さなお店ではコックが1人という場合もあります。しかし、ある程度の規模があるお店であれば、数人のコックが働いているのが一般的。結婚式場があるホテルなど、大量の料理を供するレストランであれば、見習いを含めて数十人のコックが働いていることも珍しくありません。

それに対してシェフは、料理長、総料理長という位置づけのため、コックと違いお店にはひとりしか在籍していません。メニューを開発する、コース料理の内容を組み立てる、スタッフの配置を決める、料理のクオリティーをチェックするなどがシェフの主な役割です。

そのためシェフになると、実際に調理する機会はあまり多くありません。多数のコックを抱えている大規模なレストランになると、肉料理、魚料理、前菜、デザートというように部門化されます。そのようなお店では、各部門をスー・シェフ=副料理長が束ねて管理するなど、シェフの右腕としてサポートしています。

 そのほか、お店の経営をしながらシェフとしての役割を担っている人は、ownerとchefという英語を合体させてオーナーシェフと呼ばれます。規模が小さなお店の場合、ひとりの料理人が、オーナー、シェフ、コックとすべての役割を担うこともあります。

 シェフとコックの違い③:必要な経験

シェフを目指す場合、まずはコックとして一人前になる必要があります。昔は中学高校を卒業したあと、レストランなどで修行を重ねることがコックになるための近道でした。また最近では調理師学校を卒業したあとレストランに就職し経験を積む、という流れも一般的です。大学や社会人を経て調理師学校に入りなおし、コックを志す人も増えてきました。

どのような入口であれ、最初は皆さん厨房で発生するあらゆる雑用的なことをこなしながら、少しずつ責任ある仕事を任されるようになり、料理のノウハウを覚えていきます。下積みと呼ばれるこの期間は、長いと10年以上続くことも珍しくありません。日本ではなく外国のレストランでコックとしての経験を積む人もいます。どこの国であろうと、下ごしらえ、料理、味付けなど、担当できることが徐々に高度になり、そこで仕事ぶりが認められると、副料理長、そしてシェフに昇格する点は共通しています。

 シェフとコックの違い④:必要な資格

シェフとコックは、どちらも必須となる資格がない点は同じです。ただし、レストランやホテルによっては、調理師免許という国家資格を持っていることを採用条件としているところもあります。調理師免許を持っていることで、見習い期間が短縮または免除され、早い段階でコックとして調理を担当できることもあります。

調理師免許の受験資格は、次のいずれかを満たしている必要があります。ひとつは自治体により指定されている調理師学校を卒業すること。もうひとつは調理業務に従事した経験を、週4日以上・1日6時間以上で、2年以上持っていることです。つまり厨房で経験を積みながら、調理師免許の取得を目指すことも可能なのです。

 なお、コックやシェフとして経験を積んだ人が、独立開業してオーナーシェフとなる場合、調理師免許の取得を求められることはありませんが、食品衛生責任者の資格は必須となります。

シェフとコックの違い⑤:料理のジャンル

シェフはフランス語、コックはオランダ語が語源であるように、どちらも西洋料理のレストランに勤める料理人のことを指しています。加えて、ホテルなどにある高級中華料理店でも、シェフやコックという呼び名が採用されていますが、町中華のような小さなお店では使われません。日本料理については、料理人をシェフとコックではなく、親方と板前と呼ぶという違いがあります。

厳密には、コックは調理をする人、シェフはコックを束ねる人という違いがあり、西洋料理や中華料理の世界で使われる呼称という点は共通しています。ただし、外国の日本食レストランでは、板前のことを寿司シェフと呼ぶことが慣例となっており、寿司コックとは言いません。また、ある程度の経験を積んだコックをシェフと呼ぶなど、現場により使い分けが曖昧になることもあります。そのため臨機応変に使い分けることも大切です。

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