オステリアは古代ローマ時代にもあった?ストリートフードを起源に持つ庶民の味方

2021.04.15

イタリアでは食事をする場所のひとつである「オステリア」。

レストランやトラットリアに比べると、庶民的なイメージがあるのが特徴です。その響きから英語の「ホスト」という言葉を思い浮かべますが、実際にかつては宿泊所も兼ねた施設を指していました。

今回は、イタリアで食事ができる場所を示す言葉のひとつ「オステリア」についてご紹介いたします。

普段着でもスニーカーでも入店できるオステリア

イタリアには、リストランテやトラットリア、ピッツェリア、タベルナなどなど、食事をする場所を指す名称が数多くあります。

もっとも格式が高いのがリストランテだとすれば、今日ご紹介するオステリアはおそらく下から数えたほうが早いほどカジュアル感あふれるのが特徴です。

リストランテに入るには身だしなみにも注意が必要ですが、オステリアは普段着でふらっと入店してもまったく問題ありません。

むしろ、改まった格好をしていたらかえって目立ってしまう、そんな雰囲気を漂わせています。

オステリア、その語源

オステリアという言葉はフランス語の「oste」、あるいはラテン語の「hospite」という言葉に由来するといわれています。

いずれも、外からの客を迎える場所に由来する言葉であり、本来は食事だけではなく寝泊まりする場所も提供する施設を指していました。

現代のイタリア百科事典によれば、オステリアは「ワインの提供を主に行う庶民的な施設であり、軽食も取れることが多い」と定義されています。

イタリア国内で「オステリア」という言葉が普及したのは14世紀ごろのことでした。歴史書を紐解くと、現在まで続くもっとも古いオステリアは1435年創業、北イタリアはフェッラーラに残る「オステリア・アル・ブリンディシ」とされています。

オステリアは庶民の味方

リストランテやトラットリアは、主な目的が食事をすることです。

しかしオステリアは本来、ワインなどのアルコール類の摂取が主な目的で、食べることはそれに付随するものでした。

日伊辞典では「居酒屋」と訳されています。

とはいえ、近年は「オステリア」と名乗りながらも実際にはトラットリアに近い形態も非常に多くなりました。

いずれにしても、イタリア人がイメージするオステリアは、粗末なテーブルや椅子で量り売りの地元産の安価なワインを飲み、常連たちと声高に議論し、小腹がすいたら適当におつまみになりそうなものを注文するという、映画に出てくるイタリアの下町そのものといってよいでしょう。

木製の素朴なテーブルは店の外の道まで並んでいることが多く、いわゆるストリートフードの様相を呈しているといっても過言ではありません。

古代ローマ時代に起源がある?

行きつけのオステリアでワインを飲んでひとやすみ、そこに行けば常連がいて話し相手には事欠かない。

そんなオステリアの起源は、実は古代ローマにまでさかのぼります。

言語学者のアントニエッタ・ドージが執筆した『古代ローマの外食事情(Ars Culinaria)』によれば、当時のローマ帝国内には安価なワインと食事を提供する「タベルナ」とそれプラス宿を兼ねている「ホスピティア」がどこにでも存在していたそうです。

この「ホスピティア」が、現代の「オステリア」の先祖であることはまちがいありません。

ポンペイやナルボンヌ、リヨンなどのかつてのローマ帝国の都市では、こうした庶民相手の食堂の宣伝がわりの碑文が数多く見つかっています。

ちなみに、現代はオステリアとほぼ同義語といってよい「タベルナ」は、本来はワイン小売業から発しています。また、ローマ近郊のカステッリ・ロマーニ地方にも、ほぼ同じ意味で「フラスケッタ」という言葉が存在します。いずれも、ワインを飲むのが目的の居酒屋です。

古代ローマや中世の時代のオステリアは、店の外にはには陽気な呼び込みがいて、客たちは喧嘩をしたりかけ事をしたりと大変賑やかであったことが伝えられています。

近代のオステリア

19世紀の後半になると、オステリアは宿の機能を排除して居酒屋のみという形態が増えました。

しかし古来のイメージはそのままで、庶民、特に男性たちのたまり場としてオステリアは格好の場所であったようです。

イタリアでは社交においては夫婦で連れ立って行くのが通常ですが、怖い山の神から逃れた男性たちはオステリアでワインを乗んで友情を深めていたのかもしれません。

いずれにしても、女性にとってはちょっと入りにくい雰囲気が横溢していた場所であったのです。

第2次世界大戦後、オステリアも少しずつ品よく変わってきました。現在は女性同士でも気軽に入ることができるオステリアも各地にあります。

特に、安くておいしい食事ができる町として有名なナポリ周辺には、今もオステリアがたくさん残っています。また、イタリア国内の小さな町や執政官街道沿いにも、かつての宿屋を兼ねていた名残としてオステリアが残っていることも。食器まで素朴なこうしたオステリア、従来の営業方法をそのまま踏襲していることも珍しくありません。場所によっては「うちはコカ・コーラはありませんよ」なんて言われることも

オステリアで食事をしたらどのくらいかかる?

前述したように、近年はリストランテからトラットリア、またオステリアやタベルナといったカテゴリーの境界線が非常にあいまいになっています。

いかにもスノッブな雰囲気を漂わせたお店が、わざとオステリアと名乗っていることもあるため、サイトや入り口で価格の確認が必要です。

もっとも、小規模な家族経営が多い本来のオステリアは、公式のホームページなど有していないことも多々あります。

またメニューについても、定番があればともかく「本日のメニュー」として壁の黒板に読みにくい字で書かれていることもあります。

私たち外国人がいきなり入ると、価格や注文方法で戸惑うこともあるかもしれません。

気さくな店主がいたりお節介好きな常連さんが集っている場合は、珍しい外国人の入店を喜んでおすすめ料理などを身振り手振りで説明してくれることもあります。

オステリアでワインを飲んで食事をした場合、価格はどのくらいになるのでしょうか。

オステリアが多く残るナポリの場合、ワインと食事で12~15ユーロ(約1500~2000円)というのが平均のようです。

またオステリアの場合、ワインの銘柄の選択はできないものと思っておいたほうが無難です。たいていは、その店で扱っている赤と白それぞれのワインが、水差しに入れられて運ばれてきます。

気取らずに本来のイタリアを楽しめるお店、それがオステリア!

2000年もの間、庶民に愛されてきたオステリアはまさにイタリアの文化の一端といってよいでしょう。

レストランで洗練された料理を食べるのももちろん旅行の醍醐味ですが、地元の人たちが集うオステリアでイタリア本来の開放的な空気を味わうのもオツかもしれませんね。

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