イタリア料理といえば頭に浮かぶのはなんといってもパスタでしょう。
パスタの形状もさることながら、イタリアには、味の決め手となるソースの種類も無限に存在します。トマトを使った定番のソースから地域特定の味付け、地中海式気候がはぐくむ旬の食材を使った期間限定版などなど、毎日食べても飽きることがないほど種類が多いのが特徴です。
今日は、こうしたパスタのソースについてご紹介したいと思います。
目次
大別すれば「赤」と「白」
パスタのソースといえばまず思い浮かぶのがトマトソースではないでしょうか。
パスタそのものは、イタリアにおいて中世から存在していました。1492年に、ジェノヴァ出身のコロンブスがアメリカ大陸を発見し、南米原産のトマトがヨーロッパにも到来します。そのトマトがスパゲッティと結びつけられたのは1837年。ナポリの美食家の考案でした。
トマトソースとパルミジャーノ・レジャーのチーズをおろして加えるだけのシンプルなトマトソースは、イタリアの国民食といっても過言ではありません。小学校の給食でもしばしば登場しますし、レストランに行けばメニューに載っていなくても「子供用のメニュー」として用意されているのがシンプルなトマトソースのパスタです。
そして、パスタのソースはトマトを含む「赤(ロッソ)」と、含まない「白(ビアンコ)」の2種に大別されているのが実状です。
たとえば、ツナのパスタを食べるとします。「赤にする?」といえばトマトソースをベースにしたものですし、「白にする?」といえばトマトソースはなし。
ちなみに、「パスタ・ビアンカ(白いパスタ)」もイタリアの子供たちの大好物で、これは茹でたパスタにバターやオリーブオイルなどの油を絡めて、山ほど粉チーズをかけて食べる料理のこと。好き嫌いが多い子供でも完食率が高いメニューであるため、これまた給食での登場頻度が高いパスタなのです。
トマトをベースにしたソースのいろいろ
それではまず、赤いソースの種類から見ていきましょう。
イタリアンマンマたちは自家製トマトソースを大量に作り、離れて暮らす子供たちに送り届けるなんて言う風習もあります。
市販のトマトソースを使うにしろ自家製のタイプにしろ、はたまた生のトマトを使用するにしろ、シンプルなトマトソースでパスタを食べる場合は、オリーブオイルを加えてしばし火を入れ、パルミジャーノ・レジャーのチーズを山のように削ってかけるのが基本です。バジルの葉を加えることもあります。
その他、有名なトマトソースの種類を見てみましょう。
ラグー(ミートソース)
日本ではミートソースと呼ばれるタイプは、イタリアでの呼称は「ラグー」です。トマトソースと肉の組み合わせは、一般的にラグーと呼ばれています。
私たちがミートソースと聞いて想像するひき肉を使用したものは、イタリアでは「ボローニャ風(ボロニェーゼ)」の名で通っています。
それ以外にどんな肉を使うのかと不思議に思う方も多いかもしれませんね。
「ナポリ風」のラグーには、さまざまな種類の肉が挽かずに使用されています。「トスカーナ風」には、サルシッチャと呼ばれる腸詰の肉が使用されることも多々あり。
また、ラグーを作る場合に基本となるのは玉ねぎ、にんじん、セロリのみじん切りです。イタリアのスーパーでは、これらの野菜がセットになって販売されていることもよくあります。
ラグーは郷土色が強いイタリア国内のレストランでも、子供向きの人気メニューとして定番となっていることも多い数少ないメニューのひとつです。
アッラビアータ
トマトソースにニンニクと唐辛子を加えただけのアッラビアータ。自宅で作ることも多いこのソースは、元をたどればラツィオ州北部に起源をもつ郷土料理でもあります。具がないアッラビアータは庶民階級のシンボルとされて、映画「フェリーニのローマ」やマルコ・フェレーリの「最後の晩餐」にも登場。基本的には粉チーズはかけずに食します(個々の嗜好に因ります)。
アマトリチャーナ
ラツィオ州の郷土料理であるアマトリチャーナは、その名のごとくアマトリーチェという町に起源をもつソース。この地の名産である豚の頬肉「グアンチャーレ」と、羊のチーズ「ペコリーノ」を使用するのが原則です。グアンチャーレをカリカリに炒めて食べるのが美味しさのコツ。
ノルマ
日本での知名度は低いかもしれませんが、トマトソースのパスタとしてイタリアでは有名なもののひとつがシチリアの「ノルマ」です。オペラの「ノルマ」がその名の由来といわれているこのソース、揚げたナスとシチリア産のリコッタチーズを使用するのが特徴です。淡白なナスも、揚げてトマトソースと絡むことでコクが出るから不思議。
ソレント風
南イタリアのソレントのトマトソースには、この地の名産モッツァレラチーズが投入されています。トロトロに溶けたモッツァレラチーズとトマトソースが絶妙に絡み、南イタリアの食材の美味しさを実感できる一品。バジルの葉も加えて香りもよし。
トマトなしのソース、代表例
それでは、トマトを使わないソースの例をいくつか見ていきましょう。
トマトの酸味が苦手で、こちらを好むという人も多いかもしれませんね。
アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ
料理というのもおこがましいほどシンプルに作るアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ。オリーブオイルとニンニク、そして唐辛子だけで作るソースです。もはやイタリア国内のみならず世界中で知られるこのパスタ、起源はナポリにあり。本来はあさりを入れるはずのパスタのプアバージョンといわれています。アレンジとして、イタリアンパセリや炒ったパン粉を加えることも。
ヴォンゴレのパスタ
あさり入りのパスタは、イタリア国内の海沿いの街ならばほぼ定番化しています。特に、ヴェネト州で愛されるパスタソースです。トマトソースは使わず、ロングパスタを使用するのが一般的なルール。しかし、場所によってはプチトマトを加えることもあります。ニンニクを利かせるのが特徴で、彩りと香りのためにイタリアンパセリを散らせるのがお約束。
カルボナーラ
世界中で最も愛されているイタリア料理、それがカルボナーラのパスタです。アレンジが山ほどあるカルボナーラは、これを郷土料理とするラツィオ州のペコリーノチーズ、豚の頬肉、そして卵の黄身の部分のみを使用するのがオリジナル。シンプルに見えて、卵とパスタを絡めるタイミングが難しいソースです。
ペースト・ジェノヴェーゼ
北イタリアの港町ジェノヴァ発祥の有名なソース、それがジェノヴェーゼです。バジルの葉、松の実、にんにくを粉砕して、粉チーズを混ぜるのが基本です。バジルの香りが食欲を刺激する日本でも人気のソースですが、イタリア国内ではジェノヴァがあるリグーリア州でしかお目にかかることがないメニューでもあります。
ブロッコリとサルシッチャ
南イタリアプーリア州の郷土料理のひとつが、ブロッコリとサルシッチャ(腸詰)で作ったソースのパスタです。ブロッコリと書きましたが、オリジナルはフリアリエッリと呼ばれる葉物野菜を使用、パスタは耳の形をしたオレキエッテを使うのが典型的です。ブロッコリ類とサルシッチャのコンビは、パスタだけではなくピッツァでもよく見られます。
家庭によっても異なるさまざまなソース
イタリアの家庭には、トマトソース、オリーブ、ケッパー、ツナ、さまざまなチーズが常備されていて、その日の気分で名前のないパスタソースを作ることもよくあります。
今日ご紹介したパスタのソースは比較的よく知られたものですが、これらはごく一部。イタリア国内には、星の数ほどのソースが存在しているのです。
日本の丼のように、具材は数を少なく抑えるのがイタリア料理の特徴。そのぶん、それぞれの食材の美味しさがパスタのソースに凝縮しているといえるかもしれません。
旬の味、各地の味覚、それらを存分に味わえるのが、パスタのソースなのです。
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