和食は日本が世界に誇る食文化のひとつです。その奥深さは味わいだけでなく、箸の作法や器の扱い方、食べる順番にいたるまで、食卓全体に行き渡っています。普段の食事では気にならない場面でも、会食や料亭などあらたまった席では、日本料理のテーブルマナーを知っているかどうかが、その場の印象を大きく左右することがあります。
この記事では、和食の基本的な配膳ルールから会席料理の順番まで、日本の食事マナーを一覧でわかりやすく解説します。大切な席で自信を持って振る舞えるよう、ぜひ参考にしてみてください。
参照:「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています:農林水産省
目次
和食の基本:配膳(並べ方)と一汁三菜のルール

和食には、食器の並べ方にも昔から受け継がれてきたルールがあります。なぜご飯は左に置くのか、一汁三菜の定位置はどこなのか、その基本をここで確認しておきましょう。
参照:食文化 文化庁
なぜ「左がご飯、右が味噌汁」なのか?
ご飯を左、汁物を右に置くのが日本の配膳の基本です。これは日本古来の左上位の考え方に由来しています。
古くから日本では左側をより格上とする文化があり、主食であるご飯を左に置く作法が定着しました。現在も和食の配膳の基本として受け継がれています。
一汁三菜の正しい位置と食器の配置
一汁三菜の配膳では、食器をそれぞれ決まった位置に置くことが作法とされています。
手前の左にご飯、手前の右に汁物を置きます。奥の左に主菜、奥の右と中央に副菜を配置するのが一般的な並べ方です。箸は手前に横向きで、箸先が左になるよう置きます。
こうした食器の配置は、料理を美しく整えるだけでなく、食べ物を大切にする日本の食文化の表れでもあります。
日本食の食事マナー:仕草・所作

周囲の人と気持ちよく食事をともにするために、最低限おさえておきたい仕草や所作のマナーがあります。普段は当たり前にやっていることでも、改めて意味を知ると、食卓での振る舞いがより丁寧になるはずです。
手を拭くとき以外におしぼりを使わない
飲食店で食事をする際には必ずといって良いほどおしぼりが提供されます。紙おしぼりや布おしぼりなど、お店ごとに種類に違いはありますが、提供されるおしぼりはあくまで手を拭くためのもので、口やテーブルを拭くのはマナー違反にあたるため注意しましょう。
食事の前後は「いただきます」「ごちそうさま」を
食事の前には手を合わせていただきます、食べ終わったらごちそうさまと挨拶するのが日本の食事マナーの基本です。
いただきますには、料理を作ってくれた人や食材を育てた人への感謝、そして魚や肉など他の命をいただくことへの敬意が込められています。ごちそうさまも同様に、食事に関わるすべての人やものへの感謝を伝える言葉です。形だけでなく、その意味を心に置いておくと、日々の食事がより豊かなものになるでしょう。
箸の使い方と忌み箸(タブー)一覧

日本の食事において、箸の使い方はマナーの中でもとくに重視される部分です。知らないうちにやってしまいがちなNG行為も多く、一緒に食事をする相手に不快な印象を与えてしまうこともあります。ここでは忌み箸と呼ばれるタブーを一覧でまとめ、なぜ失礼にあたるのかの理由もあわせて解説します。
参照:実践食育ナビ:農林水産省
忌み箸とは何か
忌み箸とは、食事の場でやってはいけない箸の使い方の総称です。日本の食文化や礼儀作法の中で長く伝えられてきたもので、衛生面や見た目の不快感、あるいは縁起の悪さを理由とするものなど、その背景はさまざまです。
会食や改まった席はもちろん、日常の食卓でも意識しておくと、自然と品のある所作が身につきます。
知っておきたい忌み箸一覧
以下に代表的な忌み箸をまとめました。それぞれに理由を添えていますので、単なるルールとしてではなく、意味を理解した上で身につけてください。
- 刺し箸:料理に箸を突き刺して食べること。仏事で香に箸を立てる作法に似ており、縁起が悪いとされています。
- 立て箸:ご飯に箸を垂直に立てること。これも仏式の供え物を連想させるため、食事の場では厳禁です。
- 迷い箸:何を食べるか迷って料理の上で箸を動かすこと。食べ物を粗末にしているように見え、見た目にも美しくありません。
- 寄せ箸:箸を使って食器を引き寄せること。食器は手で持つか、直接手を添えて動かすのが正しい作法です。
- ねぶり箸:箸先を口に入れて舐めること。衛生的にも好ましくなく、他の人に不潔な印象を与えます。
- にぎり箸:箸を握りしめるように持つこと。正しい持ち方ができていないと、所作全体が雑に見えてしまいます。
- 渡し箸:食事中に箸を茶碗や皿の縁に渡すように置くこと。箸置きを使うか、箸袋を折って代用するのが正しい作法です。
- 逆さ箸:大皿から料理を取り分ける際に箸の反対側を使うこと。手が触れた部分で料理に触れることになるため、取り分け用の箸を使うのが望ましいとされています。
- 込み箸:口に入れきれないほどの量を一度に箸で運ぶこと。食べ物を詰め込むような所作は見た目に品がなく、マナー違反とされています。
- 探り箸:汁物や鍋の中を箸でかき回して中身を探ること。食材を傷つける行為でもあり、見た目にも行儀が悪い印象を与えます。
- 涙箸:箸先から汁や液体をぽたぽたと垂らしながら食べること。テーブルや他の料理を汚す原因になるため、箸先の水気はきちんと切ってから口に運びましょう。
- 空箸:一度料理に箸をつけながら、そのまま食べずに箸を引いてしまうこと。食べ物を粗末にする行為として失礼にあたります。
- もぎ箸:箸についた食べ物を口でもぎ取るように食べること。見た目が下品な印象を与え、行儀の悪い食べ方とされています。
- 箸渡し:箸から箸へと食べ物を直接渡すこと。火葬後の収骨を連想させる行為として、とくに縁起が悪いとされるタブーです。
- 指さし箸:箸を人や物に向けて指さすように使うこと。食事の場に限らず、人を指さす行為自体が失礼にあたります。
忌み箸などのタブーを避けるのと同時に、基本となる「正しい箸の使い方って?知っておくべき箸のマナー」をマスターすることで、食事の所作はさらに美しく整います。
日本料理(和食)のテーブルマナー:器の扱い

和食のマナーは箸の使い方だけではありません。器の持ち方や扱い方にも、日本料理ならではの作法があります。知っておくと食事の所作全体が整い、会食の場でも自信を持って振る舞えるようになります。
器を持って食べる・持たずに食べるの境界線
小さな器は手に持って食べるのが和食の基本です。一方、大皿や焼き物皿などは卓上に置いたまま食べるのが正しい作法とされています。
具体的には、ご飯茶碗・汁椀・小鉢・小皿などは左手に持って食べます。刺身や焼き物が盛られた大きめの皿は持ち上げず、テーブルに置いたままいただきます。器の大きさや料理の種類を目安に判断すると覚えやすいでしょう。
手皿はマナー違反?正しい受け方
料理を口に運ぶとき、右手に箸を持ちながら左手をお皿代わりに添える手皿は、和食ではマナー違反とされています。
手は見た目以上に汚れているため、食べ物の下に直接かざすのは衛生的にも好ましくないとされるのがその理由です。正しい作法では、醤油皿などの小皿を左手に持ち、料理の下に添えながら口へ運びます。小皿がない場面では、懐紙を使うのが丁寧な対応です。料理を運ぶ際は右手で箸を操り、左手は器を支える役割として使うことを意識しましょう。
お椀のふたの開け方・戻し方
ふた付きのお椀は、開け方と戻し方にも作法があります。開ける際は両手でふたを持ち、左手でお椀を軽く押さえながら右手でふたをそっと持ち上げます。このとき、ふたの内側についた水滴(露)をお椀の中に戻してから外すようにしましょう。これを露切りと呼び、テーブルを汚さないための所作です。
外したふたは、裏を上にせず表を上にした状態でテーブルの右側に置きます。食べ終わったあとは、元通りにふたを戻すのがマナーです。
会席料理・懐石料理を食べる順番と作法

料亭や改まった席で提供される会席料理・懐石料理には、コースとしての流れと料理ごとの作法があります。順番の意味を知り、食べ方のコツを押さえておくと、特別な席でも落ち着いて食事を楽しめるようになるでしょう。
先付から水物まで:一般的な献立の流れ
会席料理は決まった順序で料理が運ばれてきます。その流れを知っておくだけで、食事全体をより豊かに楽しめます。
一般的な順番は、先付(前菜)→椀物(吸い物)→向付(刺身)→焼き物→煮物→酢の物→ご飯・汁物・漬物→水物(デザート)です。淡い味から始まり、徐々に味わいが深まっていくのが和食のコースの基本的な考え方です。次の料理を想像しながら食べ進めるのも、会席料理ならではの楽しみ方といえます。
料理別の美しい食べ方コツ
料理ごとの所作を少し意識するだけで、食べ方の印象はぐっと変わります。
刺身のわさびは、醤油に溶かさず刺身に少量のせてそのまま食べるのが本来の作法とされています。焼き魚は左側から食べ始め、上の身を食べ終えたら背骨をそっと取り除いてから下の身へ。魚をひっくり返して食べるのはマナー違反とされているため注意が必要です。串ものは串から外し、箸でいただくのが正式な作法です。食べ終えた骨や串は皿の端にまとめておくと、見た目にも整った印象になります。
和食の代表格であるお寿司をより深く楽しむために、知っておきたい専門用語やカウンターでの振る舞いについては、「寿司用語一覧!寿司屋で使う専門用語の意味とマナーをわかりやすく解説」もあわせて確認しておきましょう。
日本の食事マナー:食べ方

仕草や所作と同様に、食べ方にも日本ならではのマナーがあります。他の国では問題のない食べ方でも、和食の席ではマナー違反になる場合もあるため、基本的なルールを確認しておきましょう。
汁物は音を立ててよい?そばとお吸い物の違い
そばやうどんなどの麺類は、音を立てて食べても問題ないとされています。一方、お吸い物などの椀物は、音を立てずに静かにいただくのが作法です。
すべての汁物を音を立てて食べてよいわけではありません。迷ったときは音を立てない方が無難です。また、食べ物を噛む音を立てるのはいかなる場合もマナー違反です。
食事は残さずいただく
日本の食事では、出された料理を全部食べきることが、作ってくれた人や食材への感謝を示す基本的なマナーです。食べきれない事情がある場合は、食事の前に伝えておくか、食べ終えた際にひと言お礼を添えるのが丁寧な対応です。
味が薄い料理から食べる
日本食だけではなく、基本的に料理は味が薄い料理から食べるのがマナーです。味が濃い料理を食べると、デリケートな風味や味付けを感じにくくなるためです。
そのため、おかずは後にして、最初に汁物から食べるようにしましょう。汁物の次にお米、おかず、副菜の順番で食べるのが食事マナーです。
味の薄い料理から食べ始める
料理は味の淡いものから順に食べるのが基本です。濃い味のものを先に食べると、繊細な風味が感じにくくなるためです。汁物から始め、ご飯、おかず、副菜の順が目安になります。
魚は左側から食べ始める
焼き魚などは、盛り付けの左側(頭側)から食べ始めるのが作法とされています。食べやすいからといって中央やお腹の部分、尻尾側から崩すのは避けましょう。
Q&A:意外と知らない食事マナーの疑問
箸置きがないときはどうする?食事中のスマホは?など、改めて聞きにくい疑問をまとめました。
Q. 箸置きがない場合はどうすればよい?
A. 箸袋を折って箸置き代わりに使うのが正しい作法です。器の縁に渡して置く渡し箸はマナー違反になるため避けましょう。
Q. 食事中にスマホを見てもよい?
A. 会食や改まった席でのスマホ操作は、同席者への配慮に欠ける行為とみなされることがあります。緊急の場合は一言断ってから席を外すのが無難です。
Q. 食事中に中座するときのマナーは?
A. やむを得ず席を離れる際は、同席者に一言声をかけてから立つようにしましょう。箸は箸置きに戻し、ナプキンは軽くたたんで椅子の上に置いておくのが丁寧な対応です。
外食での作法を身につけたら、ご自宅でリラックスして和食を楽しむ「子どもと一緒に楽しむホームパーティー!盛り上げる方法や料理を紹介」を参考に、家族の時間を彩ってみてはいかがでしょうか。
結び:マナーは相手への思いやり
食事マナーは、ルールを覚えることが目的ではありません。一緒に食卓を囲む相手や、料理に関わるすべての人への敬意が、作法の根本にあります。形にとらわれすぎず、その気持ちを大切にすることが何より大切です。
本格的な和食の作法を自然に身につけたいなら、プロのシェフが自宅に来て料理を提供するシェフくるを利用してみるのもひとつの方法です。本物の日本料理を体験しながら、食事マナーを肌で感じてみてください。
