イタリアを旅行中、気軽に立ち寄ったレストランで思った以上に時間をとられたという経験がある人も多いことでしょう。
日本の感覚でパスタ一皿で気軽に済ませようと思っても、入ったお店の雰囲気によっては事情が許さない場合もあります。
イタリア人と言えばいつも何か食べている、食べる時間がとても長い、そういったイメージがあると思います。
この記事では、イタリア人の食事時間はなぜこうも長いのか、食事情とともにご説明したいと思います。
目次
食事時間を歴史的に見ると
イタリアは2020年の春に全土ロックダウンを宣言し、レストランも大きな影響を受けました。ロックダウン解除後も、レストランの営業時間は午後の18時までとされた経緯があります。
そもそも、イタリアの夕食の時間は20時前後が平均的であるため、18時までの営業は経営者には大きな痛手。
そこで、ある歴史学者がこんなことを提唱したのです。
それは、19世紀のエリートたちが昼食を15時以降に開始し2時間近くかけていたという歴史的な事実をもとに、イタリアも昼食をメインにしたらどうか、というものでした。
当時の昼食は量も多く、そのため夕食は夜食程度にしか摂取しなかったそうです。
つまり、イタリアにおける食事時間の長さはこうした歴史を踏まえて現代まで続いている「伝統」なのだということが分かります。
イタリアで本格的に食事をするとどのくらいかかる?
それでは、本格的にイタリア式の食事をするとどれくらい時間がかかるのでしょうか。
イタリアの食事は、次のようなメニューで構成されます。
・前菜
・パスタやリゾットなどの炭水化物が供されるプリモピアット
・肉類や魚類が登場するセコンドピアット
・つけあわせの野菜
・デザート
・コーヒー
・食後酒
これらの料理や飲み物がすいすいと運ばれてくれば問題ありませんが、そこはイタリア、それぞれの料理が運ばれてくるまでにかなり時間がかかるのが通常です。
というのも、こうした一連の食事を提供するレストランではもともと数時間をそこで過ごすことを前提に料理されているためで、訪れる客のほうもそれは承知の上、という共通認識があります。
たいていは家族や親せき、友人同士が集ってこうした食事をするのですが、イタリア人らしく約束の時間に全員がそろうことはまれで、顔を合わせれば大仰に抱き合い頬にキスし一別以来の消息を語り合い、となかなかメニューを決めるところまでたどり着きません。
ようやくメニューを広げても、全員がオーダーし終わるまでには30分近くかかることも。
というわけで、週末のお昼などに「今日はレストランで外食だよ」という日はほぼ半日潰れることを覚悟する必要があります。
プリモやセコンドをカットしても時間はあまり変わりません。
われわれ日本人の胃袋には到底収まり切らないイタリア料理。
最近は食の廃棄問題もクローズアップされているため、「私はプリモピアットを省きます」とか「セコンドピアットはパスします」といっても、レストランでそれほど顰蹙を買うことはなくなりました。
しかし、こうしていくつかの皿数をカットしても、食事時間の節約にはつながらないのも事実。レストランの給仕は、お客さんの卓上の皿の進み具合、会話の弾み具合を観察しつつ、次の料理を運ぶタイミングを見ています。
そのため、同じテーブルにいる友人知人が従来通りの食事に徹していれば、食事にかかる時間は一向に変わらない、ということになるのです。
日本ではおひとり様の食事が話題になっていますが、イタリア人がひとりで食事をする場合にはあまりレストランに入ることはありません。トラットリアあたりで済ませるのが定石です。
複数で入店することがほぼ前提であるレストランでは、短時間での食事は難しいといっても過言ではないでしょう。
イベントにおける食事はさらに長時間を覚悟せよ!
イタリアにおける最大のイベント、それはクリスマスや復活祭です。
キリスト教離れが顕著な昨今も、一族郎党が集う食事に関してだけは伝統重視。こうしたイベントの食事は、さらに時間を要して食事をすることになります。
前菜からデザートにいたるまで複数の料理が並ぶため、食後酒にたどりつくまでに3時間以上はゆうにかかります。
クリスマスや復活祭には、その時期だけのお菓子も存在します。レストランではなく個人宅に招かれると、食後にもテーブルの上にこうしたお菓子や果物、ドライフルーツが並んで、宴は果てしなく続くという光景が風物詩となっているのです。
イタリアでの食事時間を節約したい場合は?
長期の滞在であれば、たまさかにこうしたイタリア式の食事を楽しむのも一興です。
いっぽう、時間を節約したい旅行中は、上手に食事をして1日を有効に使いたいもの。
それでは、短時間で済ませることができる食事にはどんなものがあるでしょうか。
まず、イタリア人の生活に根づいているバールがあります。
バールは、コーヒーなどの飲み物だけではなく軽食も提供してくれるところが多く、お総菜のような感覚で食事を楽しめます。サンドイッチやパスタ、肉料理、野菜など、1品の注文でも問題ありません。
また、大都市のオフィス街であれば、サラリーマンを対象にオープンしている「ターヴォラ・カルダ」があります。ちょっと質のよい学食のような体裁で、セルフサービスであることも多々。食べたいものだけチョイスして、短時間で食事を済ませることができます。
さらに、切り売りピッツァやピッツァ専門のレストラン「ピッツェリア」も短時間の食事向きです。
切り売りピッツァは特にローマに多く、食べたいピッツァを好きな量だけ切り売りしてくれるファーストフード感覚が長所。
ピッツェリアは、たいていは釜焼きピッツァを提供します。観光客相手のお店以外は、昼は釜に火を入れないために夕食のみというところも多いのが実情です。
居酒屋のようなオステリア、レストランより庶民的なトラットリアも、好きな料理だけ選択できるというメリットがあり、食事時間は1時間強で済むことが多いようです。
オステリアやトラットリアならば、作り置きを選ぶのではなくメニューから注文して食べることができますので、作り立ての美味しい食事をしたい場合にはおすすめです。
イタリア人と食事をすれば長時間になるのは必須!
レストラン以外のこうした軽食のお店に入店しても、イタリア人の知人が一緒であれば否応なく時間をとられることは頭に入れておいたほうがよいでしょう。
イタリア人にとってごちそうとは、食べるものだけではなく友人知人と語り合う会話にもあるためです。
また、こうした食事を水で済ますことはまずなく、昼間でもビールやワインをおともに食事をすることから、アルコールの勢いでおしゃべりは際限なく続きます。
これもイタリア文化の一端と心得て、イタリア式の食事を楽しんでみてください!
イタリア料理をのんびり時間をかけて楽しみたくなったそこのあなた。日本のレストランではそんなに時間をかけられないという場合は、自宅に一流シェフが出張してきて料理を作ってくれるシェフくるのご利用がおすすめです。かしこまった雰囲気ではなく、シェフも含めてリラックスした環境で、ちょっとだけイタリアンに、料理と会話を楽しんでみてはいかがでしょう。